更年期以降は、さまざまな生活習慣病にかかるリスクが高くなります。特に閉経を境にLDLというコレステロール値は上がりやすくなります。
これは、LDLを処理する働きを持つ女性ホルモンが激減し、血中にLDLがだぶついてしまうからです。
LDLが増えすぎるとどんな危険があるの?
LDLは細胞膜やホルモンの材料になる大事な脂質ですが、増えすぎると血管内に溜まってしまい、動脈硬化を進めてしまいます。LDLが高い状態になると脂質異常症と診断されますが、基準値を超えるとすぐに治療が必要か、投薬を始めてほうが良いのかについては医療の現場でもはっきりとしていないのが現状です。
治療は、基準値を超えるとすぐに進められるものの、実際は治療をしなくても良い人がほとんどだからと言われています。LDLの基準値は男性のデータをもとに作られたものなので、LDLがリスクになるのは男性であり、女性の場合はLDL値が高いだけでは動脈硬化は進まないと認識されているからのようです。
一言でコレステロールと言っても、検診などで調べるものには大きく分けて「LDL」「HDL」「総コレステロール」の3つのタイプがあります。このうち一般的に悪玉と言われているのがLDLです。そして、善玉と言われているのが余分なLDLを回収する作用があるHDLであり、両方を含むのが総コレステロールです。
LDL値が高いだけでなく、善玉のHDL値が低い場合も脂質異常症と診断されます。コレステロール値が高いと心配して受診する女性の中には、HDL値が高いだけでLDL値は問題ないという人も少なくはありません。
コレステロール対策の目的
LDL値が高いとすぐに何か症状が現れるわけではありませんが、LDLは血管壁の中に徐々に溜まり血管内を狭くしていくので、将来引き起こされる心配のある、脳梗塞や心筋梗塞などの大きな病気を防ぐことがコレステロール対策の本来の目的です。
LDLはHDLが多いからといって体に悪影響を与えることはありません。しかし、中性脂肪値が高い、血糖値が高い、血圧が高い、体内の抗酸化力が低いとLDLの悪玉化が加速するので注意が必要です。
特に更年期以降は内臓脂肪がつきやすくなるので、中性脂肪には気をつけておく必要があります。女性のメタボ診断の基準が、へそ周りが90㎝以上で異常とされていますが、もっと厳しくするべきだという声もあがっているようです。
治療が必要かどうかを見極める
LDL値が高めなので、病院で治療を受けたほうが良いのかどうか迷っているという方も少なくはないようです。治療が必要かどうかは、LDL値だけで決めず、リスクなども含めて総合的に決めることが大切です。その判断材料としては、中性脂肪やHDLの値、他の生活習慣病の有無、実際の動脈硬化の進行具合などがあげられています。
実際にどの程度動脈硬化が進んでいるのが分れば、治療が必要かどうかもはっきりします。そこで注目を集めているのが頸動脈エコー検査です。この検査は、首にゼリーを塗って機器をあてるだけというとても簡単な検査です。
検査では、頸動脈の血管壁の厚さが何ミリなのかを画像で測定することができ、血管壁が厚ければ厚いほど動脈硬化が進んでいることになります。約5分程度で検査費用も高くありませんので、気になる方は検査を受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
動脈硬化を促進するリスクは、コレステロール、中性脂肪以外にも高血圧や糖尿病、肥満などがあります。女性の場合は、喫煙と糖尿病の危険度が飛び抜けて高いという結果も出ています。LDL値が高い上にこれらのリスクを持っていると男性以上に動脈硬化が進む可能性があります。
食事の改善からはじめてみる
女性の動脈硬化は通常男性よりも遅く、20年~30年かけて進みますが、糖尿病や喫煙などのリスクが重なっている場合は、それがぐんと早まります。LDLが基準値を超えていても生活習慣の改善だけで十分なのか、または投薬治療が必要なのか、リスクを見極めてから決めることが重要です。LDL値が高め、HDL値が低めという人は、まずは食生活の見直しが必要です。
卵や肉の脂身、バターなどはコレステロールを多く含んでいる食品です。コレステロールを多く含む食品を食べ過ぎないということを心掛けておかなければいけません。また、コレステロールが体外に排出されるように野菜や海藻などの食物繊維を多く摂るということも心掛けておかなければいけません。
食事のときは野菜から先に食べると血糖値が上がりにくいというメリットがあります。緑黄色野菜、緑茶などの抗酸化物を多く摂る、菓子やパンなど炭水化物を摂り過ぎない、青魚やいい油を積極的に摂る、などのことからはじめてみましょう。
その他、喫煙の習慣がある人はタバコをやめること、1日30分以上は歩くことなどの運動も心がけてみてください。